ゴムの疲労
ゴムの疲労とは
破断応力や破断ひずみよりはるかに小さい応力やひずみが
動的または静的に一定期間加えられることによって
その材料の目的とする機能を徐々に低下する現象を
疲労と呼んでいます。
ゴムを含む高分子材料にこのような、動的または静的荷重又は
変形が加えられたときにおこる現象は
- 第1には、クラックの発生とその成長を経て破断に至る疲労破壊がある
摩擦もこの範ちゅうに入る
- 第2には、塑性流動で、ゴムは代表的粘弾性材料であるが
長期の荷重や変形下では、塑性流動がおこる
「へたり」とよび永久クリープや応力緩和として現れる
- 第3には、材料自身のミクロ構造変化とそれに伴う特性変化で
弾性率、異方性、tanδなどの非破壊特性が変化する
ゴムの劣化とは
- 外力が作用しなくても起こる変化、
酸素、オゾン、放射線、紫外線、高温、低温などの環境下で起こる物性や強度
の低下は、劣化と呼ばれます。 - ゴム製品は、使用状況、使用環境、使用年数、その他いろいろな要因によって、本来のゴム弾性を失い、ひび割れや亀裂や軟化・硬化などが生じることがある。
この現象を、一般的に「劣化」といいます。
例えば、
長期間使用していた、若しくは製造日から数年経過した未使用の輪ゴムに細かい亀裂が入って、それが突然切れてしまったりするのも、この「劣化」によるものです。
ゴムのオゾンにる劣化
- 主に、SBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)について
- 古い輪ゴムが簡単に切れてしまう現象ですが
輪ゴムだけでなくすべてのゴムに起こる現象で
空気中に含まれるオゾンが原因している場合があります。
- オゾンは、
高圧電流の発生する付近や日光の当たる場所で発生しやすく
そのような場所に置いておくだけでも劣化が進んでしまいます。
また、ゴムに応力が働いている場合その応力がはたらいている場所に
いっそう劣化が進行します。そして、そのスピードも早くなります。
また日光が、オゾン劣化と直接関係ないとはいえ
日光の当たるところは他の場所よりオゾンの濃度が高いので
オゾン劣化しやすくなります。
- 劣化の特徴は、
日光や紫外線による場合は、
表面にランダム方向に無定形にひび割れ(亀裂)が生じますが
オゾンの場合は、
応力がかかった方向の垂直方向に亀裂が生じるのが特徴です。
環境によっては、新品から1年も経過しない内に
オゾンクラックがみられるケースもあります
このような劣化がみられた場合は、設置場所を変えるか
出来るだけ応力のかからないようにするか
材質をEPDM等に変えてみる事も検討しましょう。
- このように、オゾンはゴム製品には悪影響を及ぼしますが
人や動物や植物には、成層圏のオゾン層で紫外線を和らげてくれたり
日当たりのいい浜辺などはオゾンが豊富なので療養所などが建設され
健康の保持に役立っています。
ゴム材料の疲労破壊のメカニズム
- ゴム材料が大きな外力を受けると、分子主鎖(C-C結合)は、
引っ張り方向に引き伸ばされ配列しようとします。
その際、その大きな外力は水素結合や
ファンデルワールス結合などの物理結合よりはるかに強いとき
まず、分子鎖どうしのすべり、分離や再配列が起こります
- ところが系内に分子鎖の再配列を妨げる因子(架橋点、からみあい、
結晶、充てん物)が存在すると、それらの近傍にある分子鎖は緊張状態
になり、最初に外力を担う働きをしますが、この緊張状態(応力)が
分子鎖の化学結合より大きくなると、局部的な分子鎖切断が起こるようになります。
- 1個の分子鎖が切断されると、その隣の分子鎖が代わりに応力を
担うようになるため、分子鎖の切断はその周囲に伝播し集合して
やがて、ミクロボイドを形成する
- 系内に発生した無数のミクロボイドのうち、
臨界の大きさグリフィスクラックに成長したものはミクロクラックとなる
グリフィスクラックの大きさに達しなかったミクロクラックは
破壊に関係のない存在としてそのまま系内に残るか
消滅する
- ミクロクラックは非可逆的に成長を続け、そのうち最大の大きさの
ものが、マクロクラックとなる。
- マクロクラックは、巨視的にはその突端の最大主応力点を追いかけながら
引っ張り方向に直交して前進する、しかし微視的にみると、マクロクラックはその突端部に形成される応力場内で成長したミクロクラックと
合体し破断進行面に凹凸を形成しながら進む、そして最終的な
全面破断に至る
もし、一つの系内に大きな応力集中の原因となる異物、傷、構造欠陥
などが存在すると、同じ外力を受けても、
その付近の分子鎖はそれ以外のところにある分子鎖より
はるかに大きな緊張状態を強いられる結果
上記の過程は予想以上に進行する
文献:ゴム工業便覧 日本ゴム協会編より抜粋
熱や寒さによる劣化
- 事象
外気温や接触物の温度により、ゴムの分子が破壊され物性を失う。 - 原因
ゴム自身の耐熱性や耐寒性、周囲の環境によってゴムの物性が低下する。 - 説明
ゴムはその素材に応じて、耐熱温度と耐寒温度が存在します。
常温に於いては弾性に富んだ特有のゴム物性を持っているが、低温化ではその物性が失われて硬化する。(常温:日本工業規格では「常温」を摂氏20℃±15℃の範囲として規定JIS Z8703)
低温で硬化する場合、また、極端な低温化に於いてはガラス転移点での脆化と硬化、結晶化傾向のあるゴムについては結晶化による硬化も起こる。
ガラス転移点を下回っている状態ではゴムはガラス状となり、ゴムの性質を喪失する。
一方で、高温化ではゴムの分子が分断され、物性の低下やそれに伴う亀裂の発生等が考えられる。この耐熱性については、耐熱温度と使用耐熱温度として分けられる。耐熱温度は短時間だけ耐えられる温度、使用耐熱温度は長時間高温に曝される場合での耐熱温度。